広島の本|広島の出版物と、広島にゆかりのある出著者・出版物を検索・紹介するWebSite

注目の著者インタビュー

長沼 毅さん

12

長沼 毅スペシャルインタビュー Vol.02

2013/11/13

引き続き、長沼 毅さんのスペシャルインタビュー 第2弾

すべり台から「人間とはなにか?」と、疑問を感じた長沼少年。読書好きな少年の興味は、宇宙の果てから深海・極地・火山帯まで、無限の広がりを見せ始めたのでした。


『酒ビン片手に南極・北極から火山、砂漠、深海・地底など、地球の辺境を放浪する吟遊科学者。学名: カガクカイ・インディ・ジョーンズ・モドキ、あるいは、ホモ・エブリウス(Homo ebrius)「酔っ払ったヒト」。』
(長沼 毅Twitter自己紹介より)



●夜空を眺めていた長沼少年が生物学に!?

 高校3年のときの生物学の教科書に「生物の起源」という項目がありましてね。私はそれまで生物なんて大嫌いだったんだけれども、その項目だけは面白くて。そこにある日本人の名前があったんですね。ちょうど私が高校生のときに、その人が海外から日本に帰ってきて、筑波大学の先生になったんです。その先生を慕って、筑波大学で「生命の起源」について研究したいなと考えたんです。
 教科書に載っていた「生命の起源」というのは、普通の化学実験でした。
 水の中にいろんな物質を突っ込んでグツグツ煮たら、「細胞」っていうものが出来ましたと。そういった反応をもうちょっと複雑に丁寧にやれば、やがて細胞が動き出し分裂するんじゃないか!? とね。そんな時代だったんです。未だにそれがうまくいっていないんで、今となってはその研究は間違いだったかもしれないけれど。あの当時は、人間が「生命の起源」を再現するのはもう目の前だと思われていたんです。
 筑波大に来られたその先生は、普通の大学でいうところの理学部の化学科におられました。私は高校の生物の教科書で「生命の起源」の話を知ったので、当然、その先生は筑波大生物学部にいると思ってその学部に進んだんです。でも実際、先生は理学部の化学科。よく考えたら、それって化学実験だもんね。すごいがっかりですよ。こんなはずじゃなかったのにってね。
 でも、その先生にも会ってお話しをしたところ「今、自分のいる場所でがんばりたまえ」と。「山登りにたとえれば、山の登り口が違うだけであって、頂上は同じだからがんばって登りなさい」という言葉をいただいたんです。


●研究は星空から深海へ

 大学院に進んだ私の指導教員が、海底火山の調査をされている方でした。あのころって海底火山の発見が相次いだ時代なんです。
 海底火山の中のもっと下の方、地中に海水が染み込んで、それが熱せられ三百数十度の熱水として噴出する現象があるのですが、そここそが、昔々の「生命の起源」の場だったんじゃないの!? という研究でした。それまでは水たまりとか、干潟や波打ち際が生命が誕生した場所ではないかとか言われてましたが「そうじゃない、海底火山の熱水が噴き出ている場が『生命の起源』だ」なんて言われた時代です。
 そこで私も、海底火山を日本人の手で発見するという初めてのプロジェクト、初めてのクルーズ(航海)にその先生のおかげで参加させてもらえました。海底火山がある場所の近くは、海中の微生物がやたらと増えるんです。微生物が専門だった私は、海底の地形を見ながら、海底火山があるであろう場所のあたりを付け、そこで海底の水を汲んで調査をします。海底火山に由来する物質・成分が入ってますよね。それとともに、火山ガスの成分をエサにする微生物の量を測定するわけです。そこで微生物の数を計りまくっていたら、突如として微生物がぼっと増える場所があったんです。「増えました」と報告すると「ここを徹底的に散策しよう」と深海カメラを下ろすと、ドンピシャだったんです。日本人による海底火山探査の初の発見の場に幸運にも居合わせられたんですよね。しかもそれは、生命の誕生の場かもしれないんです。
「もしかして、今でも新しい生物が誕生しているかもしれない」なんていう話から、どんどんと深海生物にめりこむようになってしまいました。


●極限環境での「思いつき」は大切

 水圧が大きな深海のうえに海底火山周辺は300度を超えるような温度の熱いお湯も吹き出しています。とにかくすごい環境なんです。一方、陸上の火山はどうなってるの? 逆に寒い方は、南極みたいなマイナス数十度とかでも生命って生きていけるの? 砂漠などの水がないところは? 深海を皮切りに、地球上のいろんな極限環境での生物が気になり、それを確かめに行ったんです。そうやって、どんどん極限環境に手を出していった結果、今こうなってるんですよ。
 私の個人の趣味としては、人にモノを頼んで取ってきてもらう、というスタイルはあまり取らないんです。私は基本的には出不精なんだけれど、やはりそこに行くと、何かしら感じるものがあるんです。「あ、このサンプル欲しいな」と思って、実際その場所にいるときは感じなんですが、後で考えると私の直感がそう言っているんでしょうね。直感っていっても、本当は私の脳のどっか一部が論理的な筋道だった考え方をするんですよ。それが表層意識に出ないだけであって、ちゃんと論理的に考えての答えのはず。深いところで考えてくれてた結論が、それが表層意識に出たきたときに、「あれを取れ」と指示するんです。表層意識の上っ面じゃわかんないんだけれども。深層意識の私が、表層意識を動かす、と。
 それをたぶん、人は「思いつき」と言うんでしょうね。アイデアがポーンと浮かんでくる、みたいな。だから、浮かんできたアイデアは、結構重要なので大切にしてます。それを逆に妨害するのが「思い込み」。思い込みがあると、浮かんできたアイデアや思いつきを消しちゃう方向に働くんです。だから、思い込みはなるべく無くすように、思いつきは大事に。
 それをするためには、やはり現場に行かないといけません。現場の風景を見ていると、思いつきますよ、絶対に。例えば私なら「このサンプル、面白い」とか。
 でもね、その瞬間は、この思いつきが大切だ! とか、わかんなくていいんですよ。


長沼 毅ホームページ http://takeshi-naganuma.jp/

              Twitter @NaganumaTakeshi

12
長沼 毅さん

著者プロフィール

ながぬま・たけし

1961年生まれ。生物学者、理学博士。広島大学大学院生物圏科学研究科准教授。生物海洋学、微生物生態学を専門にし、極地・辺境などの過酷な環境に生きる生物の探索調査をする。深海から南極・北極、砂漠や火山帯などにも出向き、精力的に研究を続けている。多数のテレビ、ラジオ、雑誌等を通じて「科学の面白さ」を幅広く伝える。『世界をやりなおしても生命は生まれるか?』(朝日出版社)、『生命には意味がある』(メディアファクトリー)ほか著書多数。

注目の著者インタビュー一覧

Copyright@Themediasion.co.,ltd  相互リンクはこちら
株式会社ザメディアジョン 新卒採用のコンサルティング・アウトソーシング 広島グルメwalker 合同説明会&就職勉強会