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注目の著者インタビュー

小山田浩子さん

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『工場』

2013/07/25

『工場』(新潮社 1,890円)

●この本を書かれたきっかけを教えてください。

もともと子どもの時から本が好きだったので、書くことに憧れみたいなものがあったんです。本気で書こうと思ったことはありませんでしたが、私以上に本が好きだった主人に、「書けるんじゃない?」と言われて。じゃあ書いてみようかと思ったのが一つです。当時、大きなメーカーの子会社で派遣社員をしていたんですが、仕事を指示してもらわないとやることがなくて、本当に暇な時間があったんです。朝の10時半に任された仕事が片付いて、定時までどうやって時間をつぶそう、上司は出張に行っちゃっていないし……みたいな。仕事をしているふりをするのがすごく大変で(笑)。意味のない数値をエクセルに入れては消してみたり。工場みたいなところで働いていたので、納品書のフォーマットで仕様を細かく書くところに「工場内で気になること」を書いてみました。パッと見、納品書を作っているような感じで。本当はいけないんでしょうけどね。それがきっかけというか、始まりですね。

●ご主人が「書いてみたら?」とおっしゃったのは、何か理由があるんですか?

もともと広島の編集プロダクションに勤めていて、主人はそこの同僚だったんです。私が書いた文章を最初にチェックするのが主人だったので、日々見てもらっていて。雑誌や記事の文章ってある程度、無味無臭というかデータがきちんと伝わるような文章じゃなきゃいけないと思うのですが、私はそれがあまり上手ではなくて。いつも修正で真っ赤になって返ってきていたのですが、「こういう文章が書けるなら、小説とかを書いてみたらどうかな」という感じで言われたんです。

●表題作は初めて書かれた長編作品とのことですが、文章の組み立て方が独特ですよね。すごく計算された印象を受けたのですが。

 全然、何も計算してないです。テクニック的なことはよく分からなくて。頭に浮かんだ順番に、短い文章を次々と書きました。最終的に正しい時系列に並べ替えるかどうかを考えたんですが、あえて直しませんでした。文章の流れ的に正しいことを書いているときには、一文の最後の句読点を打つと次の文章の頭がすぐ出てくるんです。この単行本に入っているのは、すべて文章自体が有機的につながっていている感じで、先にプロットや大まかな流れを考えて書くことはありませんでした。ここで「主人公がなんていうのかな?」「どんな描写をしようかな?」など考えてしまう作品は大体途中でダメになるような気がします。

●結末に驚きました。いろんな取り方があると思うのですが、こういうことを感じて欲しいというものはありますか?

 小説を書いていると、終わらせる為の「何か」が無いということがよくあって。これはどうしたものかと思っていたら、最後の一文がパッと浮かんできました。「あぁ、これで終われるな」と。文章がどんどん溢れ出てくるからこそ、終わらせ方が見えなくなってきて。でも、有機的なつながりは大体どこかで尽きるんです。その段階でもう一回最初から見直して、さてこれは何が書いてあるのか、と自分でもう一回考える。すると、いらない所や足りてない所、入れ替えたほうがいい所が出てきて、自分で編集作業をします。その段階で出ているもので終わっていればいいんですが、途中で尽きた段階が小説の終わりとは限らない。「じゃ、どうやって終わる?」っていうことを考えて、付け加えるのかもしれないし、どこかをバッサリ削ってもっと前に終わりを持ってくるかもしれない。私の場合、夫に見せて「これはどんな風に終わるんだろうか」と家庭内で会議をすることもありますね。実際「こういう風に読んだ」という感想をたまに目にしますが、皆さんそれぞれバラバラなことを仰っているので、むしろありがたい。思ったように取って頂けたらと思います。

●ラテンアメリカ文学も読まれるとのことですが、本作にも影響はあるのでしょうか?

「工場」は完全に影響を受けています。特にリョサの「緑の家」(ペルーの小説家、ラテンアメリカ文学の代表的作家の作品)は時系列もバラバラ、エピソードもバラバラでいろんなことがグチャグチャっと出てきて、読んでいて最初はわけがわからないんですが、読み終わると全部が「あ、そうか、そうか!」ってつながるような作品。ああいう作品があって面白かったから、「工場」も時系列で整えなくてもいいかなっていう判断になりました。そういう意味では非常に影響を受けています。


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小山田浩子さん

著者プロフィール

小山田浩子
おやまだ・ひろこ

1983年広島生まれ。2010年、「工場」で新潮新人賞受賞。2013年、表題作ほか二篇を収めた単行本『工場』を刊行。同書は第26回三島由紀夫賞候補作となる。広島市佐伯区に在住。

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