広島湾の魚の専門家と、モーツァルトの専門家。二人の知識の交流の上に描かれた、広島湾に生きる生き物たちの姿。広島湾変化と現状を、生き物を通して問いかける一冊。著者は広島湾で40年以上も漁師を続け、海の変わりゆく姿と、そこに住む生き物たちの様子を見続けてきた。広島湾から消えてしまった数々の生き物たち、逆に新たに住み始めた生き物たちもいる。漁師として海で生きてきた経験をもとに、そこに住む生き物の習性や生体形をこと細かに観察し、記してある。小さな海域に多くの生き物が暮らす広島湾を「箱庭」と呼ぶ著者に、広島湾へ対する愛が感じられる。
1930年広島市生まれ。旧制広島一中卒業後、カキ養殖などの漁業に従事。その後、約25年間にわたり、広島市南区の丹那漁業協同組合組合理事長を務める。80歳になった今でも船を出し、広島湾とともに生きている。